+48 Social Clubは、東京のまん中に特別企画される期間限定のゲリラ・クラブです。ここでは選び抜かれたポーランド製品、最新デザインとそれを取り入れた文化的環境を日本の方々に紹介します。 +48 Social Clubは、Tokyo Designers Week(東京デザイナーズウィーク)の一部として1週間開催されます。ポーランド・デザインの紹介に加え、音楽や映画など豊富なプログラムも用意されています。 このゲリラ・クラブは、ポーランド人デザイナーやとポーランドのデザイン会社により設計・製造された家具や雑貨、ポスター、書籍、雑誌、ボードゲーム、商品パッケージなどを結びつける場です。ここ数年、もっとも興味深く、独立した文化的・芸術的活動が集まり、活発に行われるのがこうしたポーランドの大都会のクラブ・カフェのような場所です。当然ながら、ゲリラ・クラブは様々な商品、グラフィック・デザイン、音楽、映画、その他の文化的活動が自然に出会う空間でもあります。これは50年代頃から花開いたポーランドのモダニズムをルーツとする現象です。ちなみに、最近、ポーランドの若い世代のデザイナーたちがよくインスピレーションを得ているのはこのモダニズムです。このクラブ・カフェは、最近、現代のクリエーターの作品にしばしば蘇るポーランドのデザイン史に触れる機会となるほか、様々な活動を結びつける場として、ポーランドのデザインと文化をもっとも気楽でカジュアルな雰囲気の中で紹介します。 +48 Social Clubプロジェクトは、様々なお客様を対象とした豊富なイベント・プログラムにより構成されています。デザイン専攻の大学生、プロの方々、お子様など多くの皆様に向けて情報を発信していきます。ポーランドのデザイナーとイラストレーターであるアレクサンドラ・ニエプスユ、エドガル・ボンク、ベザ・プロジェクトによるワークショップ、「Political Dress(ポリティカル・ドレス)」、「Beats of Freedom(ビーツ・オブ・フリーダム)」、「Neon(ネオン)」といったドキュメンタリー映画の上映などを行います。開催期間中、見学者はポーランドのビニール盤の物語やファンクミュージックを聞く事も、「Small Instruments」ミニチュア楽器団のワークショップや彼らの演奏するコンサートを聞く事もできます。

Idea

Klubokawiarnia "Towarzyska", proj. Jan Strumiłło, fot. Jakub Certowicz

 

 
 

ワルシャワのフオデゥナ通り25番地にある有名なクラブ・カフェのバー・カウンターの上に、「すべての芸術革命はカフェから始まる」という一文が掲げられていた。これは、ポーランドのアヴァンギャルド芸術家・演出家であったタデウシュ・カントルの言葉である。実際のところ、ワルシャワのカフェや安価な食堂は、19世紀にはすでに「独自文化の中心」 としての役割を担っていた。こうした場で、革新的な芸術コンセプトが練られ、サブカルチャーが芽生え、新しい社会理念が生まれていった。第二次世界大戦後から1989年まで続いた共産主義下のポーランド人民共和国では、カフェは知識階級と芸術家の社交場となった。そこで見られた状景は、情報交換や政権批判が繰り広げられる 一方、その横では、様々なスキャンダルが浮上したり、反骨精神旺盛な作家らが殴り合い、ユーモアあふれる芸術家やデザイナーたちは壁に絵を描くという具合だった。 余暇の過ごし方や芸術家の創造活動の形態を強要していたスターリンの恐怖が終焉した20世紀の50年代末期、ポーランドでは消費文化が芽生え始めた。製品や建築はそれ自体によって人々の教養を育み、また、美しいフォルムを日常生活に普及させることで、世界をよりよい場所にするという役割を果たした 。1956年頃からポーランドで見られた政治組織の自由化は、モダンで、有機的で、奇抜で機能的なフォルムが復活するきっかけとなった。ワルシャワや他の都市では、軽く、ガラスを多用した建物など、真の工学傑作で優秀な建築作品が建てられるようになった。商品デザイナーがインスピレーションを得ていたのは、新しい素材や顕微鏡で見られる構造のような生物学的形状、西ヨーロッパのアヴァンギャルドな絵画作品など。フェンス、建物の外壁、街中の広告塔は、ユーモラスで絵画美術として高い価値のあった、いわゆる「ポーランド流アート」のポスターで覆われるようになった。新たに誕生した文化・ライフスタイル雑誌のイラストは、風刺画やスマートなコラージュなど、想像力に満ちた作品で占められた。第二次世界大戦後のポーランド・モダニズムは、戦前のヨーロッパのデザイン・建築のスタイルを参考にしていた。その特徴は、進歩・産業化への信念であり、また、デザイナーと建築家たちは、社会変化に単に携わることができるだけではなく、携わるべきである、つまり、「素晴らしい新世界」を構築すべきである、という確信だった。 クラブ・カフェは、独立した思考、自由な創造活動、最新デザイン情報、モダンな試みが出会う空間だった。50年代後半から60年代にかけて開店したワルシャワのカフェや安価な食堂のインテリアは、最も優秀なデザイナーにより設計され、その壁は奇抜な布地で飾られ、壁画はイラストレーターや画家により描かれた。漸進的な思想と洗練されたデザインが出会い、有機的なフォルムの椅子に文学者が座り、そして、「ライコニク」(Lajkonik)クラブ・カフェのように、芸術家たちは壁に自らの絵を描いていた。クラブ・カフェは、「総合芸術作品」というモダニズムの理想を具現化する存在だった。 建築・デザインの分野でほかに例のない進歩的なフォルムが開花したにもかかわらず、共産主義経済下では、その製造・販売は不可能だった。ロマン・モジェレフスキによってデザインされたアームチェアのような斬新な家具の多くが、プロトタイプのままとり残された。日常の生活空間は、「食堂コップ」(Kubki barowe)のような、大量生産された、安価でありふれた物であふれていた。ちなみに、「食堂コップ」は数年前、共産主義ポーランドへのノスタルジーの象徴として復刻された。建材は低品質ながら優れた共産主義時代モダニズムの代表例とされる数々の建築物が、20世紀末から住宅開発業者の攻撃的戦略と、共産主義ポーランドの遺産保存政策の欠如により解体され始めた。マグダレナ・ワピンスカによる磁器置物のモデルとなったスーパーマーケット「スパサム」(Sezam)も同じような運命をたどった。ポーランド共産主義時代、消耗品の質が劣化するとともに、物自体も入手困難となったため、いわゆる「日用品狩り」現象が発生した。この現象を紹介する作品はマヌカ・スタジオ製の「待ち行列」(Kolejka)ボードゲーム。 最近、ポーランドデザイナーたちは、作品を通して戦後モダニズムのアイディアとフォルムに回帰するようになった。この現象は、共産主義ポーランドで過ごした子供時代への純真なるノスタルジックな風潮から生じたものもあれば、街の物質的文化とアイデンティティへの関心という風潮から生まれたケースもある。ガラスを多用した建物の近代的フォルムが再現され、戦後の物質的文化のアイコンの復刻版が製造・販売され、ポーランド戦後建築・デザイン史が執筆されるようになった。同時に、ワルシャワなどに、いわゆる「市民の喫茶店」 がオプーンし始めた。「市民の喫茶店」は、地域社会と街から生まれた、社会・政治変化に向けたイニシアチブといった、新しい都市運動のはじまりとなった。 クラブ・カフェは、飲食の場であるのみならず、市民的イニシアチブが生まれる場、文化的イベントのプログラムに富んだエンターテイメントの場であるが、その創成期において、モダニズムの物質的文化への関心の高まり、低く評価されてきた戦後デザインの象徴の再発見といった現象と重なりあった。クラブ・カフェには、復刻されたモダニズムのアイコン的家具や雑貨、またはモダニズムの影響を受けた家具や雑貨が置かれ、文化イベントを案内する最も野心的なポスターを壁に貼るためには最適な環境となった。クラブ・カフェの本棚には、デザイン・内容共に最も興味深い本や雑誌が置かれ、訪れた客はそれを手に取り、読むことができる。こうしてカフェは、市民的イニシアチブ、文化イベント・討論の場と、そして地元のデザイナーの作品が活躍する空間とを結合するという現象に立ち戻ることになる。この現象の鍵となったのは、ポーランドの50〜60年代のモダニズムを参考にしたことだが、実はそれには二面的な要素があり、一つは、風習的意味合いからクラブ・カフェというコンセプト自体を取り入れたこと、もう一つは、美的意味合いから政治組織が自由主義化された頃の作品やフォルムからインスピレーションを得たことである。

[1] A. ステゥシェミンスカ、J. メンツフェル、K. J. オレシンスカ「[文化のカフェ。その診断]調査の結果報告」〔http://stocznia.w1.laboratorium.ee/wp-content/uploads/2014/01/Kawiarnie_...〕3ページ。
[2] J. クシャク、W. カツペルスキ「ウォッカと民主主義のキオスク。新しい都市運動の形成と社会区分の再生の場としてのワルシャワ[市民の喫茶店]の政治史」(B. シヴィオンテゥコフスカ『都市の名誉』ワルシャワ、2012年、138ページ)。
[3] W. Bryl-Roman、「合理的で美しい日常のフォルム。政治組織の自由化後、[プロジェクト(Projekt)]の近代化」(『近代化のビジョン。50、60年代のデザイン、美、ライフスタイル。[50、60年代のポーランドと世界の美学、近代のビジョン、ライフスタイル]のセッションからの資料』ワルシャワ国立美術館、ワルシャワ、2012年、64ページ)。
[4] 同上、132ページ。

 
 
 

Events

311月'14

Small Instruments, photo: press materials
ポーランドデザイン展「+48 Social Club」 の音楽イベントとしてポーランド人のマウェ・インストゥルメンティ(Small Instruments、小柄の楽器の意味)のライブ・コンサートやワークショップが11月3日に開されます。

211月'14

アレクサンドラ・ニエプスユの子供向けのワークショップ @ +48 Social Club, Vacant, photo: Kazuomi Furuya
東京の VACANT で行われる+48 Social Club プロジェクトの豊富なイベント・プログラムの一環としてポーランド人のグラフィックデザイナーとイラストレーターによるワークショップが展開されます。アレクサンドラ・ニエプスユが子供やプロ向けのイラストレーションのワークショップを行います。

111月'14

エドガル・バンク、photo: Cezary Hładki
受賞グラフィックデザイナーエドガル・バンクが、他ののポーランド人のアーティストとともに東京の VACANT で行われる+48 Social Club プロジェクトの豊富なイベント・プログラムの一環としてワークショップを行います。

3110月'14

Elements of the "Patch" system by Beza Projekt, photo: press materials
絆創膏の形の金具を使って組み立てるシンプルな家具をです。

2910月'14

Still from the documentary "Neon", photo: courtesy of producers
+48 Social Club とはポーランドデザイン展だけでなく、ポーランドのドキュメンタリー映画上映も予定しています。
Wojciech Smarzowski, photo: Wojciech Druszcz/Reporter
/East News
+48 Social Club デザイン展が VACANT でポーランド人ヴォイテク・スマルゾフスキ監督とパネル・ディスカッションが開かれます。

2810月'14

Soul Service, photo: press materials
ポーランドのファンクとソウル音楽のDJグループ Soul Service が VACANT でライブを開催。

Selected Objects

Guests

Edgar Bąk (エドガル・ボンク)

>エドガル・ボンクは、ビジュアル・アイデンティティや雑誌のレイアウトを中心としたビジュアル・コミュニケーションの仕事を手がけている。また、イラスト、ポスター、CDジャケットなど、小規模プロジェクトにも携わる。ジャーナリストのシャーロット・ウェストとともに刊行物「Projekt: The Polish Journal of Visual Art and Designを作り、ロンドンの出版社Unit Editionsから出版した。ポーランド国内で数多くの賞を受賞。エドガル・ボンクがアートディレクターを務める雑誌「WAW」は、国際的に評価を受けており、ニューヨークのSociety of Publishing Designersから「Merit Award」賞を贈られた。 

Aleksandra Niepsuj (アレクサンドラ・ニエプスユ)

アレクサンドラ・ニエプスユは、ワルシャワに拠点を置くグラフィックデザイナーでイラストレーター。コラージュやペンシル・インク、ペイントとデジタル技法を組み合わせた作風が特徴。ポーランドとポルトガルの美術大学で学ぶ。その後、3Dコンピュータグラフィックスとポスターについて母校で教鞭を取る。ポスター、ビジュアル・アイデンティティ、インフォグラフィックをデザイン。彼女のイラストは、ポーランド国内外で多くの雑誌、本、子供向け出版物に使われている。ニエプスユにイラストを注文した企業は、Nike、Converse、Braun、Apple Polskaなど。

Beza Projekt (ベザ・プロジェクト)

ベザ・プロジェクトは、アンナ・ウォスキェヴィッチとゾフィア・ステゥルミウォ・スキェンニキが設立したワルシャワにあるデザインスタジオ。商品のデザインや少数限定品の製造過程の企画を手がける。幼児用の野外遊具、インスタレーション・アート、家具などの小型建築物・オブジェクトもデザインしている。ベザ・プロジェクトのポートフォリオには、意欲的で型にはまらないデザインや商品コンセプトがある。デザイナーのアンナ・ウォスキェヴィッチとゾフィア・ステゥルミウォ・スキェンニキは、プロダクトを既製の作風から解放し、より革新的な考え方を取り入れるように心がけている。 

Curators

Agata Szydłowska (アガタ・シドウォーフスカ)

アガタ・シドウォーフスカはワルシャワ大学美術史学科卒業後、ポーランド科学アカデミー哲学・社会学研究所付属の社会学大学院を卒業。ポズナニのSchool of Formでデザイン史を、ワルシャワのポーランド日本情報工科大学でビジュアル・コミュニケーション史を教える。デザイン関連企画のキュレーターとして活躍。グラフィクデザインについての記事を発表している。レネ・ヴァヴジキェヴィチとともにデザイン評論アトリエ(Pracownia Krytyki Dizajnu)を設立。

Aleksandra Ubukata (生方アレクサンドラ波利子)
 

生方アレクサンドラ波利子は、東京在住のフリーグラフィックデザイナー/イラストレーター。ワルシャワ美術大学、多摩美術大学卒。東京のギャラリー「Claska」で行われた「自由のためのデザイン、デザインにおける自由」(Design for freedom, freedom in design)会議や、Tokyo Passport開催中にアートセンター「3331 Arts Chiyoda」で行われた「ポーランドのグラフィックデザイン」(Poland Graphic Design)など、デザインにまつわる様々な展示会や会議のコーディネート・主催を務める。日本政府の奨学生。彼女のポートフォリオには、ポーランド郵便のためにデザインされた切手や、成田空港内の案内表示システムなどがある。

Aureliusz Kowalczyk (アウレリウシュ コヴァルチック)
 

建築家。ワルシャワ工科大学とオランダのベルラーヘインスティテュートにて建築を学ぶ。その後、早川恵美子と共にハヤカワ/コヴァルチックを東京に設立。 最近の重要なプロジェクトには、ポーランドの近代住宅を集めた展示「For example. New Polish House」に選出された「「ワルシャワ近郊の森の中の住宅」や東京に新たに開廊したアートギャラリー「ブラム アンド ポー」などがある。

 

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